京都で読んでいる文献(1)組織の条件適応理論 : コンティンジェンシー・セオリー

帰省するとあっちこっちに呼ばれ、近況報告したりお墓参りしたりと意外に忙しかったりします。
とはいえ、細切れの時間が山ほど出てくるので文献を読みふけるということになります。
で、1冊目は

Lawrence, Paul R. Lorsch, Jay William."Organization and Environment: Managing Differentiation and Integration" Harvard University Press, 1967(吉田博訳 『組織の条件適応理論 : コンティンジェンシー・セオリー』産業能率短期大学出版部、1977年)
※なんと、ISBNコードがつく前に絶版したのか、ASINに登録されていない→はまぞうで紹介できない

コンティンジェンシー理論(条件適応理論)の古典中の古典であるこの論文ですが、全体の読み込みはともかくとして、元マーケティングリサーチャーとしてはこんなことも思ったりした。

アンケート設計を行う際、いくつかの設問項目を用意して○がついた数を足し挙げて指標化することはよくあることである。

この指標を複数設定した場合の取り扱いについて、学術研究においてはどれほど厳密に取り扱っているであろうか。P.R.ローレンスとJ.W.ローシュは同書の中で自らが実施した定量調査の分析結果を掲出するにあたり次のように述べている。

(3つの合成指標を表中で比較している場面で)各店数を合計することが正しいとされるのは、三要因間の相互相関と、理論上の関係の両方に基づいている。これら三要因の間には、いくつかの有意な相互相関はあったが、それは完全なものではなかった。〜中略〜各項目を合計する以前の問題として、それらがどの程度同質的であるか、という複雑な問題がある。つまり、相互相関が高いことは、高い信頼度だけを反映したり、または個々の質問の間にかなりの重複があることも反映するからである。同質性が低いというのは、各項目間の信頼性が低いか、または、それらが別々のことを測っているという事実によるものである。(ビクター.H.)ブルームの結論は、「これらの項目同士が理論的に関連しており、そして、同じ影響をもたらす諸変数を含んでいる場合には、各項目の点数を合計して一つの点数に集計することによって、それだけ測定値の範囲、ないし幅を広げることになる」となっている。著者たちの事例の場合、確実性を測定するための三要因は、理論的に関連があり、類似ではあるが、そのもたらす影響は同一のものではない。したがって、より総括的な測定尺度を得るためにこれらの項目を合計し、単一の確実性の得点を算出することは、容認されると考える。

多数の設問項目(変数)を集約して複数の合成変数を作るのによくとられる方法には二つある。一つは因子分析など多変量解析を用いる方法。この場合、合成プロセスが数値データとして履歴となるため、メソドロジーに基づき(恣意的な判断が入り込む余地があまりなく)自動的に採択されるプロセスが確定する(ことが多い)。
もう一つは最初から合成する前提で設問項目を作成しておくこと。これは「以下の条件のなかで5つ以上当てはまったら自意識過剰です」などのように心理テストや占いなどでも用いられる。もちろん、このように合成される変数の中身を予め決め込んでおくことにより時系列分析がブレないという利点もあり、市場調査等でもよく用いられるやり方ではある。

しかし、どちらの方法をとっても、その合成変数のセットの妥当性・正当性の裏側には上記のような考え方が根底にあるべきだということは頭の片隅においておくべきだろう。そして、科学的厳密性を要求される場面においては何をおいても念頭に置くべきであろう。

・・・・ということを改めて考えました。さあ、これから色々なデータを収集し、それをエビデンスにして論文を書くわけで、、、、、、気をつけていかなければ、ですね。