Web情報アーキテクチャ(2)情報アーキテクチャの構成要素

Web情報アーキテクチャ―最適なサイト構築のための論理的アプローチ

Web情報アーキテクチャ―最適なサイト構築のための論理的アプローチ

というわけで、ようやく本編です。
まず最初に、Web以前の「情報アーキテクチャ」に関して構成要素を挙げてくれています。

  • 組織化システム:いかに情報を分類するか。例として、サブジェクト別や時系列順
  • ラべリングシステム:いかに情報を表現するか。例として、一般用語(「かえで」)か、科学用語(学名用の"Acer")か
  • ナビゲーションシステム:いかにブラウズしたり情報を移動したりするか。例として、階層をクリックで動き回るなど
  • 検索システム:いかに情報を検索するか。例として、インデックスに対して検索要求を実行することなど

〜P46 情報アーキテクチャの構成要素

ということで、まずは組織化ありきとなっています。確かに、組織だっていない=完全に(コンテクスストから)独立した情報ってそもそも存在しない(それは「可用性がないデータ」ですね)わけで、まず

  • 集合を形成していなければならない
  • 集合自体が他の集合との関係性をベースとしたコンテクストを持っていなければならない
  • 集合を構成している個別要素も、集合内の他の構成要素との関係性をベースにしたコンテクストを持っていなければならない

ということでしょう。

次にラベリングシステムについて。これについては構造主義・機能主義といった哲学の領域に踏み込むこともできるのですが(オントロジもそうですね)、ここではラベル(器)がないと物理的形態を持たない情報(というかデータ)は取り扱うことすらできませんよね、ということで、とりあえず。

ナビゲーションシステムはGoogle以降?フォークソノミーアーキテクチャ設計に関してはクエリをかけて検索すれば済んじゃうからどうとでもなる、というのがSBMを提供するサイトで見られる大きな流れなのでは。
特にこのはてなダイヤリーなんて、カテゴリ別にエントリを見ようと思ったら、ヘッダ部分の検索窓に*[カテゴリ]という文字が表示されたりしている。
唯一このジャンルでとりあげるべきナビゲーションシステムはタグクラウドSBMなどでのランキング(ホッテントリ)とかなのかな、と。
(細かいUIに関してはここでは議論の主題ではなく、それこそ情報アーキテクチャ(やウェブユーザビリティ)について突き詰めて議論する際にすればいいのでは、と)

で、結果的に重要なのが検索システムになるわけなのですが、ここで行っている議論では、検索アルゴリズムというよりは、クエリのキーとなるメタデータ(タグ)集合のもつセマンティクスにどこまで計算機可読性を求めるべきか、またタグのレコメンデーションなどタギングプロセスそのものに計算機の力を入れ込むべきなのかという議論なのかなと。
こちらについては、先行研究レビューではなく、別の場所できっちり議論できればと思います。

で、議論を進めていく上で留意しなければならないのは、この本はあくまでもサイト設計者の立場での書物だが、フォークソノミーメタデータは個別ユーザが作るものであり、リテラシレベルもばらばらでコンテクストを共有していないという前提であろう。

フォークソノミーは組織化システムとラべリングシステムを担っている。組織化を行うプロセスの中で、集合を形作るためのセレクションという点ではいわゆる集合知は十分機能すると思われる。問題は「組織」の大事な要素である「システム=構造」が作り出せるのか、という点であろう。アバウトでいいのであれば構造はあるとするのが自然であろう。ただ、高い精度が必要とされるレベルに対応していけるのか、という点が問題となるであろう。

組織化システムは一見厳格なヒエラルキー構造を要求しているようにも思える。ところが、

オントロジー工学 (知の科学)

オントロジー工学 (知の科学)

オントロジー工学に例として出されているオントロジは下位階層で違う幹から伸びた枝先といきなりつながっていたりもするわけで、厳密=ヒエラルキーではないことも確か。

ラベリングに関してはThe Structure of Collaborative Tagging Systemsでの三つの問題点、すなわち

  1. polysemy:多義性
  2. synonymy:同義性・同義語の存在
  3. basic level variation:基礎的な分類レベルの混在

がある。これにかんしてはどうにかしてうまく扱う術を見出すより他はない。

それと同時に、タグはそもそもなぜつけられているのか=付与者の意図、と、実際にどのように使われているのか、という実態を把握する必要があるのではとも考える。

ナビゲーションは、それこそUIがユーザのタギング行動に与える影響を測定するより他はないのであるが、自分の持っているケースサンプルはこれを論じるには少なすぎるかな、と。中長期的な課題なのでしょうか。

検索システムについては、そもそもボトムアップで得られたデータをどこまで操作してよいのかという議論につながるような気がしています。これについてはまた後ほど論じたいと思います。

セマンティックウェブでは最終的に検索システムに落ちなければ仕方がない。しかし先ほどのユーザの意識に関する分析とも関連する以下の議論は避けて通れない。

  • タグの果たす機能としてはあとから(自分や他ユーザが)検索するときの補助となるようにタグ付けをしているわけだが、そんなことを意識してやっているユーザがどれほどいるのか?
  • また、自分以外の他人(個人)やコミュニティによってつけられた組織化システムを活用するにはセマンティックの面でどの程度のレベルが要求されるのか?