比較制度分析に向けて(4) 第5章 慣習としての組織と人的資産タイプの共進化

ちなみにこのエントリは

比較制度分析に向けて 新装版 (叢書≪制度を考える≫)

比較制度分析に向けて 新装版 (叢書≪制度を考える≫)

の本のメモ書き、の続きです。

この章は、いきなり冒頭の引用が効いている。全文をここに掲載。

企業の理論でしばしば問われているように、人々は、なぜすべての企業が同じ記号化方法を採用し、その記号にかんする訓練の結果が相互に通用可能なようにしないのか、という問いを発するかもしれない。第1に、この組み合わせ論的状況では同程度によい多数の最適な記号化方法が容易に出現する可能性があるのだが、企業の中で役立つためには、当を得た記号を知ることが重要である。この状況は、シェリングがとりわけ強調してきたコーディネーション・ゲームの状況に大変よく似ている。2人の人が、出先で互いに連絡が取れない状況で出会いたいと思っているならば、あらかじめ待ち合わせ場所を決めておかねばならない。待ち合わせ場所がどこであるかは、それほど重要ではないだろう。しかし、ある待ち合わせ場所をすでに選んでいる組織にとって、異なる待ち合わせ場所を学習した人間はあまり役に立たないのである。

これ、出展元は

組織の限界 (岩波モダンクラシックス)

組織の限界 (岩波モダンクラシックス)

やっぱり古典には力がある。

記号化方法の統一、って本当に"組織内組織間"ですら、あまりなされていない。ま、それが如実にわかるのが、業界用語であったり、、、
タグはこれをさらにはっきりと可視化するものだけれど、タギングシステムは記号化方法の統一に寄与するのか、否か、、、


P146
◆組織的活動のメカニズム

もっともプリミティブな物理的仕事を含め、組織内のどんな活動も情報処理の側面を持っている。このことは、組織的活動に従事するとき、経済主体は彼(女)自身の心的プログラム(mental program)――または認知メカニズム――を実行して、関連する環境状態を認識・解釈し、さまざまな代替的な行動が(他の経済主体たちの反応をも含んだ)状態にもたらす結果を予測し、関連する問題を解決するためそれらの中から意思決定上の選択を行っていることを意味している。

ここまでは、はい、そうですね、というところ。大事なのはここから。

そのようなプログラムは、通常「もし・・・・・ならば・・・・・」という形式の「ルール」の束なら成り立っている。

プログラムを組んだ経験がある人なら(たとえエクセルVBAマクロであっとしても、というか、まさにVBAマクロがそうなのか!!)この意味はいやというほど実感するのでは。

たとえば病院の医者は(中略)蓄積されたルールを動員することによって患者の状況を解釈している。

すべての分析プロセスはまさしくこれですね。医者じゃなくても、たとえばデータ分析などでも、いろいろな「におう」データをいくつもピックアップして、それを過去の経験により蓄積したルールに照合しながら判断を下しますからね、、、

そのようなルールは経済主体の頭脳の中で、ある一定の秩序で蓄積され、時間をかけて改定され、組織化され、そして認知した状態によって「起動される(triggered)」。このように、それらは資本――人的資産――としての側面を持っている。

経験者優遇の理屈はこれ。